不倫の証拠になるもの

不倫の証拠になるもの

第1 はじめに ~争いある不貞行為の立証には証拠が必要~

不倫慰謝料を請求するためには、まず不貞行為が行われたことを主張する必要があります。しかし、不貞行為があったことの主張だけでは、不貞行為の相手方が自発的に認めてくれないかぎり、往々にして不貞行為があったとして慰謝料請求をしても最終的に金額を獲得することができません。すなわち、不貞行為をした相手方に、不貞行為の存在を認めさせたり、あるいは裁判官に不貞行為の存在を認めてもらうような証拠を収集することが、極めて重要です。

なぜなら、民事裁判では、当事者間に争いのない事実については、裁判所はそのまま認定をすることになりますが、裁判所が当事者間に争いのある事実を認定するためには、当事者が提出し取り調べられた証拠によらなければならないというルールがあるからです(弁論主義と言います。)。

そして、不貞行為の存在は、不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条)の発生を基礎づける「権利侵害に関する事実」ですので、相手方が自発的に認めないかぎり、当事者が提出した証拠によって立証しなければならない事実ということになります。

第2 不貞行為とそれを立証するための証拠

では、不貞行為について、どのような証拠を用意すればいいのでしょうか。まず、不貞行為とは、自由な意思に基づいて、配偶者以外の異性と性交渉を行うことを言います。配偶者以外の異性と性行為を行っていたことを推認させるような証拠とは、どのようなものでしょうか。

1 入手が容易な公文書関係

この場合、公文書については、簡易に手に入れることができますので、比較的安価な費用で不貞行為の存在を立証できるということになります。

①不貞相手の戸籍謄本

仮に不貞相手が子供を産んでいる場合、不貞相手の戸籍謄本をとることによって、不貞行為すなわち不貞配偶者と不貞相手との間の性交渉の存在を立証できることがあります。

たとえば、不貞配偶者が男性である場合、不貞相手の子供を認知した時には、戸籍謄本にその情報が載ります。そして、不貞配偶者・不貞相手自身が、性行為をしていたことを認めているということですので、不貞行為の存在を立証する材料となります。

②住民票

仮に別居をしている場合であり、不貞相手と思われる自宅に住民票を移動させているような場合には、不貞配偶者と不貞相手が同棲しているということを不貞配偶者自身が認めていることになります。不貞配偶者が長期間不貞相手と同じ場所に居て、生活を共にしていたということは、性交渉があったことに繋がってきますので、不貞行為の存在を立証することができる材料の一つとなるでしょう。

③日本人出帰国記録・宿泊記録

クレジットカードや領収書などから旅行先の宿泊記録を調査して、判明することもあります。また、旅行先が海外である場合には、出入国記録をたどることが出来る場合もあります。二人で宿泊している場合には、不貞行為を推認できる場合もありえます。

2 その他の文書

①妊娠・堕胎の事実に関する文書

請求者と不貞配偶者との間に性交渉がないのに、妊娠や堕胎をした場合には、他者との不貞行為の存在を推認させる事情になります。ただし、これだけでは請求者と不貞配偶者との間に、性交渉がなかったことを裁判所に証明することはできませんので、たとえば子のDNA鑑定書や子の血液型診断書と共に提出する必要があると思われます。また、プライバシーにかかわるとして、そもそも入手そのものが困難な可能性が高いものともいえます。

②子のDNA鑑定書

不貞配偶者が出産し,DNA鑑定の結果が不貞相手のDNA型と親子関係が強く推認できるという内容であった場合には、不貞行為の存在を強く推認できることになります。ただし、費用がかなり高いと思われますので、鑑定結果が有利なものとある程度確信できるような状況でないかぎりおすすめできません。

③探偵社や興信所などの調査報告書

たとえば、不貞配偶者が、不貞相手とホテルや不貞相手の家などに、数時間入っているものが記載されている場合には、不貞行為を強く推認する証拠になりえます。

ただし、基本的に費用はとても高額で、数十万円以上かかることもよくあります。多くの場合、調査にかかった時間、人員を元に算定されることになるので、ピンポイントで日時を特定して調査をした方が無難です。そして、仮に高額の費用が掛かったとしても、その費用を不貞相手に請求して認められるとはかぎりません。このため、使い方を誤ると、慰謝料請求をしても調査報告書代金すら回収不可能なこともありえます。

④クレジットカードの利用明細・領収書

ホテル等の宿泊施設の領収書があった場合、宿泊施設の内容次第ではありますが、二人で宿泊した事実を推認させるものになります。その場合、性交渉等の存在についても、立証できる可能性があります。ただし、考えられる反論として、不貞相手と泊ったわけではないということもありますので、誰と泊ったのかを推認させる他の証拠も併せて利用する必要があります。

また、普段使わないようなコンビニや店舗などの領収書についても、ホテル街に近かったような場合には利用できることもあります。

⑤不貞当事者の作成した手紙・メールやSNS記録

様々な場面で、重要な意味を持つことが多いものです。特に不貞発覚前のやり取りの場合、不貞行為を強く推認できる場合があります。また、不貞期間や不貞行為の場所、不貞回数などについても立証できる場合があります。

⑥不貞配偶者作成の謝罪文・誓約書等

不貞配偶者が自認した場合には、不貞配偶者にとって不利益な事実ですので、不貞行為があったことについては認められる傾向が高いかと思われます。そして、これを作成したとすれば、後で撤回して不貞行為を争うことはそれほど多くないと思われます。ただ、同居を続けた場合には、不貞配偶者が破棄することもありますので、安全な場所に保存することや写真に収めるなどの証拠の保全が重要になってきます。

3 写真・録音テープ・ビデオ映像

内容によっては、不貞行為の存在を立証することができます。例えば、不貞行為時に撮影した画像などがあれば、不貞行為を立証するための強力な証拠となり得ます。ただし、録音テープやビデオテープについては、裁判所に提出しても、ほとんどの場合において、それらをそのまま見たり、聞いたりしてくれるわけではありません。これらを提出する場合には、反訳書面を提出する必要があります。

4 GPSの位置情報に関する資料

たとえば、市販のGPS端末などを利用することで、ラブホテル駐車場に停車していたような場合には、不貞行為の存在を強く推認できることになります。証拠化の方法としては、動作中の画面などを写真に収めておくという方法が、よく見られます。

ただし、プライバシーを侵害しているので、違法収集証拠として証拠能力がないと反論される可能性もあります。この点については、第3において詳しくご説明させていただきます。

第3 不貞行為と違法収集証拠

最近、携帯電話・スマホを用いて、写真やビデオなどを撮影される方が多くいらっしゃるかと思います。また、メールやSNS記録や写真などは、とても強く不貞行為を推認できる場合があることは、第2において説明したとおりです。

ただ、自分のものであればともかく、配偶者の携帯電話のデータを勝手にコピーする際、ロックがかかっていたのに、それを解除したなど、入手方法次第によっては、証拠の証拠能力が問題となることがあります。同様に、電話を盗聴する等の方法の場合も同じ問題がありえます。なお、証拠能力のみならず、不正アクセス禁止法違反になるおそれもありますので、十分注意が必要です。

証拠能力とは、事実認定のために利用しうる資格をいいます。違法に収集された場合には、事実認定のために利用してはならないという決まりが、刑事訴訟法の中に存在します(刑事訴訟法319条以下)。ただし、民事訴訟法の中には、原則として証拠能力に制限はないとされています。

しかしながら、民事訴訟においても、例外的にですが、違法収集証拠として証拠能力が否定されることもありえます。というのも、違法収集証拠について、無制限に証拠能力が認められるとすれば、裁判所がある意味違法行為を黙認していることにもなりうるからです。このため、一定の場合には、その証拠能力が排除されることもあります。

実際に、東京地方裁判所平成10年5月29日判決においては、不貞相手である被告側が、不貞配偶者である原告妻を使い、請求者である原告の自宅に侵入し、大学ノートを入手した事案においては、「許容しがたい行為」として書証として認めませんでした。

また、携帯電話のデータについて、東京地方裁判所平成21年12月16日判決においては、メール文が信書(特定人がその意思を特定の他者に伝達する文書)と同様に、理由なく第三者に開示されるべきではなく、正当な理由なく第三者がこれを入手したり、利用したりすることは許されないと判断して、証拠能力を否定しました。もっとも、これと同様の論点については、東京地方裁判所平成21年7月22日の判決において、証拠能力を肯定しており、裁判例が分かれております。

このように、最近の携帯電話のデータやGPS等の情報といった、文明の利器から生じるものは、極めて強力な不貞行為の推認力がありますが、一方でその情報・データの入手方法について問われるという問題も出てきています。したがって、その入手方法についても慎重に考えていくべき時代でもあります。そして、裁判例が分かれているように、個々の事例によって判断すべきでありますので、専門家に一度相談してみることをおすすめいたします。

第4 まとめ

ここでは、現在の実務において、不貞行為の存在を立証するために、よく提出されるものを挙げました。今後は、GPS等の様に、今後の科学技術の発達によって、新しく証拠とすることができるものも出現するものと思われます。

したがって、不貞行為の存在を立証するための証拠は、必ずしもここに挙げたものに限られるというわけではありません。ただし、立証の過程や、証拠能力に関する違法収集証拠等の基本となる原理・原則については、基本的に変わりません。また、収集方法によっては、証拠能力がなくなるばかりではなく、刑事的な問題になることもありえます。

このことから、証拠の入手方法については細心の注意を払い、不貞行為を立証するように努めて下さい。

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