慰謝料

不倫慰謝料の時効と時効を止める方法

不倫慰謝料の時効と時効を止める方法

夫や妻が不倫したとき、当事者間でのトラブルや証拠集めに時間がかかり、いざ慰謝料の請求を考えた時に、不倫を知ってから随分時間が経っているということがあります。
しかし、慰謝料請求権には「消滅時効」があります。

時効が成立すると、慰謝料請求ができなくなってしまうため、不倫の事実を知ったなら、なるべく早めに慰謝料請求をする必要がありますし、時効を止める手段も考えなければなりません。

今回は、不倫慰謝料の時効と時効を止める方法をご紹介します。

1.慰謝料請求権の時効とは

(1) 債権の消滅時効

消滅時効とは、一定期間権利を行使しないことによって権利が消滅してしまうことです。
たとえばお金を貸しているときには、5年間や10年間支払いを受けずに放置していると、借金が時効にかかって消滅し、請求できなくなってしまうことが知られています。

慰謝料の請求権も貸金返還請求権と同じように1種の「債権」なので、消滅時効によって失われる可能性があるのです。

(2) 時効が認められる理由

一定期間権利を行使しないからといって、どうして権利がなくなってしまうのでしょうか?法律が消滅時効を認めている理由を確認しましょう。

① 権利の上に眠るもの

1つは、「権利の上に眠るものを許さない」という考え方です。
権利を持っているのに行使しないで放置しているなら、そのような債権者を保護する必要はないので、権利を消滅させてしまおうということです。

② 債務者の信頼保護

もう1つは、「もう権利行使されることはないだろう」という債務者の信頼を守るためです。
長期間権利行使されなければ、債務者としてはもはや請求されることはないのだろうと考えるものです。
そこで権利を消滅により、その信頼を保護しようとしています。

以上のような理由から消滅時効制度が認められています。

2.慰謝料請求権の時効期間

債権の時効は、債権の種類によって期間や計算方法が異なります。
慰謝料請求権は、どのくらいで時効消滅するのでしょうか?

(1) 不倫は不貞行為 = 不法行為

慰謝料請求権は「不法行為にもとづく損害賠償請求権」の1種です。
不倫のことを法律上「不貞(ふてい)」と言いますが、不貞は配偶者に対する重大な裏切り行為です。
そこで、配偶者がいるのに別の異性と肉体関係を持ったり、配偶者のある人と肉体関係を持ったりすると「不貞」として不法行為が成立すると考えられています。

そして、不倫された配偶者は不貞によって大きな精神的苦痛を受けるので、不法行為者である配偶者や不倫相手に対し、不法行為にもとづく損害賠償として慰謝料請求することができます。
よって(時効に話を戻しますと)、慰謝料請求権の時効には、不法行為にもとづく損害賠償請求権の時効が適用されます。

(2) 不倫の慰謝料請求権の時効計算方法と起算点

それでは、不法行為にもとづく損害賠償請求権の時効はどのようにして計算するのでしょうか?
法律上、以下のように規定されています。
第724条【不法行為による損害賠償請求権の期間の制限】
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。

これを、不倫の慰謝料請求にあてはめてみましょう。

不倫の慰謝料請求権の場合、「損害」は「不倫の事実」、「加害者」は不倫相手と不倫した配偶者をさします。
そこで不倫相手に慰謝料請求をするときには、「不倫の事実」と「不倫相手の素性」の両方を知ったときから3年間が経過した時点で慰謝料請求権が消滅することになります。

この「知ったとき」に当たる時効のスタート時点を、時効の起算点と言います。
「夫が不倫しているかもしれない…」と思っていても、不倫相手がどこの誰か不明な状態では、不倫相手に対する慰謝料請求権の起算点が到来していないため、時効は進行せず、時効にはかかりません。

(3) 配偶者に対する請求と離婚のタイミング

配偶者に対して慰謝料を請求する場合、不倫相手とは異なる考え方になります。

配偶者に慰謝料請求するのは、通常、離婚するタイミングです。
婚姻関係を継続する間は配偶者と家計が同一であるため、慰謝料を請求する意味がないからです。
また、配偶者と離婚しない場合、慰謝料の金額も低額になるので、その意味でもあまり慰謝料請求するメリットがありません(ただし離婚しない場合でも不倫相手に慰謝料請求される方は多いです)。

配偶者との離婚時に慰謝料請求するときには、「不倫の慰謝料」というよりも「離婚慰謝料」として請求することになります。
離婚慰謝料とは、違法行為によって離婚原因を作ったことに対する慰謝料です。
そして離婚慰謝料は離婚したときに確定的に発生するので、離婚した時点が「不法行為時」となります。
よって、配偶者と離婚したときの慰謝料請求権は、離婚時が起算点となります。
離婚時から時効の計算を開始し、離婚後3年が経過した時点で消滅時効によって請求が封じられます。

(4) 時効の起算点のズレに注意

このように、不倫相手に対する慰謝料の計算方法と配偶者に対する慰謝料の計算方法は異なります。

不倫相手が判明している場合、不倫相手に対する慰謝料請求権の時効は不倫したときから進行しますが、配偶者に対する慰謝料請求権の時効は離婚時から進行するので、不倫相手に対する慰謝料請求権が時効消滅しても、配偶者には慰謝料請求できるケースがあります。

反対に、離婚後に不倫相手が判明したときには、不倫相手に対する慰謝料請求権の方が長期間存続することもあり得ます。

不倫の慰謝料請求権の消滅時効の期間はケースによって異なるので、正確に把握したい場合には、法律の専門家である弁護士に相談してみてください。

3.慰謝料請求権の除斥期間とは

不倫相手に対する慰謝料請求権の時効は不倫相手の素性がわかるまで進行を開始しませんが、いつまでも出来るわけでもありません。
慰謝料請求権には「除斥期間」というものがあるためです。

除斥期間とは、所定の期間が経過すると当然に権利が失われてしまうことです。
不法行為にもとづく損害賠償請求権の除斥期間は「不法行為の時から20年」間とされています(民法724条後段)。
つまり慰謝料請求権との関係で言うと、不倫関係(不法行為)が始まってから20年間の除斥期間が過ぎると、慰謝料請求の権利者が「不倫の事実を知らなくても」「不倫相手が誰かわからなくても」慰謝料請求権が確定的に消滅してしまうのです。

不倫の慰謝料請求権を長期間行使していない場合、時効だけではなく除斥期間も意識しておく必要があります。

4.時効の援用とは

時効が成立すると慰謝料は請求できなくなるはずですが、相手(義務者)が「時効援用」しない限り、支払いを受けられる可能性があります。

時効援用とは、「時効の利益を受けます」という意思表示です。
時効が成立しても、時効によって利益を受ける人が「時効援用」をしないと、時効の効果は確定しません(※)。
そこで、こちらが慰謝料請求をしたときに、相手が「時効援用」しないで慰謝料を支払ってくれば、そのお金を受けとってもかまわないのです。その場合、相手が後から「時効援用します」とは言えません。

不倫の事実や不倫相手のことを知ってから3年が経過しても、相手が時効援用をしないことを期待して慰謝料請求をしてみることは可能です。

※ なお、先に説明した除斥期間には「援用」が不要です。不倫があってから20年が経過していると、相手が時効援用をしてもしなくても権利が確定的に消滅し、慰謝料請求はできなくなります。

5.時効を止める方法は?時効の中断について

(1) 時効の中断とは

法律上、時効を止めることを「時効の中断」と言います。

時効が中断されると、時効期間がリセットされ、再び必要な期間が経過するまで時効は成立しません。
たとえば、不倫の事実と不倫相手を知ってから2年半が経過したときに「時効を中断」すると、そこで時効がリセットされ、時効を中断した時からさらに3年(場合によっては10年)が経過しないと時効が成立しません。
時効の中断を繰り返すことで、除斥期間にかかるまで、慰謝料請求権を維持することができます。

(2) 時効の中断事由は大きく3つ

それでは具体的に、何があれば不倫の慰謝料請求権の時効が中断するのでしょうか?
時効の中断事由には、大きく3つのパターンがあります。

【時効の中断事由】
① 承認
→ 債務の存在を認める、一部の支払いをする
② 請求
→ 裁判上の請求、支払督促、調停
③ 差押え、仮差押、仮処分

 

これ以外に、内容証明郵便による催告による時効の停止があります。
以下で、それぞれについてみていきましょう。

(3) 中断事由1:債務承認

債務承認とは、債務者自身が「債務があります」と認めることです。
債務承認の方法は、書面でも口頭でもかまいません。しかし口頭の場合には証拠が残らないので、後から「そんなことは言っていない」と言われる可能性があります。
そこで、不倫相手や配偶者に債務承認させるときには書面をとっておくべきです。たとえば「浮気の自認書」や「誓約書」「念書」などの書面で「不倫したので慰謝料を必ず支払います」と書かせると良いでしょう。もしくはICレコーダーなどで、相手が「慰謝料を支払います」と言うのを確実に録音しておく方法もあります。ただし音声の場合、確実に相手の声であることと、話した時期を証明できる必要があります。

また、債務の一部を支払うことも債務承認となります。不倫相手に慰謝料請求をしたとき、相手がさまざまな反論をしたり「お金がない」と言ったりして慰謝料を支払わないケースがありますが、時効が心配ならば、一部だけ(たとえば1000円だけでも)先に支払をさせれば、その時点で時効を中断させて再度時効を巻き戻すことができます。

(4) 中断事由2:請求

① 裁判上の請求

不倫相手自身に債務承認させることは、簡単ではありません。
一部支払ってほしいと言っても「示談が成立するまでは支払わない」と言われる可能性も高いです。
その場合には、不倫相手に訴訟を起こすことにより、時効を中断させることが可能です。
裁判上の請求」も時効中断事由となっているからです。

裁判を起こすと裁判の申立時に時効が中断するので、裁判の途中に時効期間が過ぎても、時効が成立することはありません。そして慰謝料の支払命令の判決が出たら、その慰謝料請求権は「確定判決によって確定した権利」となります。
慰謝料請求権の場合、もともとの時効期間は3年ですが、確定判決に認められる時効期間が10年なので、裁判で確定判決を得ると時効期間が10年に延びます(民法174条の2)。

② 支払督促

また、訴訟だけではなく、支払督促によっても時効を中断できます。
支払督促をしたとき、相手が異議を出すと本訴訟に移行しますが、その場合には支払督促が申し立てられた時点で時効が中断します。
訴訟の準備が間に合わない場合や相手が異議を出さないことが予想される時には、支払督促が有効です。

③ 調停

「裁判上の請求」には、調停も含まれます。
不倫相手や配偶者に調停をした場合にも、調停申立て時から時効が中断するので、調停中に時効期間が成立しても時効は成立しません。
調停の場合、成立したらそのまま慰謝料の支払を受けられますし、調停にもとづく権利の時効期間は判決と同様10年となります。

これに対し、調停が不成立になった場合には注意が必要です。
調停が不成立になった時点で本来の時効期間が既に経過している場合、不成立になってもすぐに時効が成立するわけではありませんが、調停成立後1か月以内に訴訟を提起しないと時効が成立してしまいます。
そのため、調停が不成立になったらすぐに訴訟を起こしましょう。

(5) 中断事由3: 差押え、仮差押、仮処分

3つ目の時効中断事由は、差押え、仮差押、仮処分です。

差押えとは、判決や公正証書などにもとづいて相手の給料や預貯金などの財産を取り立てることです。

仮差押とは、裁判が確定するまでの間に相手が財産隠しをするのを防ぐため、仮に相手の財産を差し押さえることです。

仮処分は、同じく裁判が確定するまでに相手が権利行使を困難にするのを防ぐために、仮に法律的な地位や権利を認めてもらうことです。

ただ、不倫の慰謝料請求で、差押え、仮差押、仮処分によって時効を中断させることは少ないでしょう。

(6) 時効の停止:内容証明郵便による催告

不倫の慰謝料請求権の時効を中断するためには、裁判による請求が有効なケースが多いでしょう。
しかし裁判には準備が必要で、すぐに起こせないこともあります。
その場合には、内容証明郵便で慰謝料請求をすることにより、時効を「停止」させることができます。

時効の停止とは、時効の進行を一時的に止めることです。
中断のように当初に巻き戻すことはありませんが、一定期間時効の完成を延長することができます。

このときの内容証明郵便による請求のことを「催告」と言います。

催告をすると、その時点から時効の進行が6か月間停止して、その6か月間の間に訴訟を提起すれば、確定的に時効が中断して、時効が10年間延長されます。
そこで、不倫の事実や不倫相手を知ってから3年が経過しそうになっていたら、まずは内容証明郵便で慰謝料の請求書を送り、半年以内に訴訟を提起すれば、慰謝料請求権を保全することができます。

ただし、催告は一度しか認められません。催告で延長した6か月の間に再度内容証明郵便を送っても再度の延長は認められないので、その間に確実に訴訟提起をしましょう。

6.時効が完成していなくても急ぐべき理由

時効をある程度理解できた方の中には、不倫の慰謝料請求においても「まだ時間があるから…」と思って、請求を後回しにする方がおられます。

しかし、その対応はまずいです。
時効が完成しなくても、不倫の証拠がどんどん散逸し、請求自体が難しくなるからです。

不倫で慰謝料請求するときには、証拠が必要です。証拠がなかったら、相手から「不倫していない」と言い返されて、それ以上追及できなくなってしまいます。

不倫の証拠を一番集めやすい時期は、不倫が行われているときです。交際中ならメールや写真なども目に付きやすいですし、探偵を雇って後をつけさせて浮気の現場を押さえることも可能です。

しかし別れてしまったら新しい証拠は生まれませんし、古い証拠も処分されて、証拠を非常に集めにくくなります。3年が経過しなくても、証拠集めがほとんど不可能になってしまう可能性も高いです。

そこで、不倫の事実や不倫相手のことを知ったら、すぐに慰謝料請求に取り組みましょう。
不倫相手の素性がわからなくても弁護士が調べられるケースがあるので、あきらめずにご相談下さい。

7.まとめ

不倫で慰謝料請求するとき、なるべく多額の慰謝料を獲得するためには、慰謝料請求権の時効も意識しつつ、確実に獲れるように行動すべきです。
そのためにも、専門家である弁護士に依頼するのが最適です。

泉総合法律事務所では、ご相談を頂きましたら適切な不倫の証拠の集め方をアドバイスいたしますし、相手への内容証明郵便による慰謝料請求書の送付や示談交渉、場合によっては裁判など、慰謝料を回収できるまで万全の対応をいたします。

不倫問題にお悩みであれば、お早めにご相談下さい。

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