慰謝料

不倫の慰謝料請求と消滅時効|3年前の浮気は慰謝料請求できる?

不倫慰謝料の時効と時効を止める方法

配偶者に浮気や不倫をされたとき、離婚するかどうかに迷うとともに、精神的苦痛についての慰謝料請求を考える方も多いでしょう。

しかし、不倫相手や配偶者への慰謝料請求はいつまでもできるわけではなく、「時効」という期間制限があり、一定期間で請求できなくなってしまいます。

この記事では、「2年前、3年前の浮気・不倫について慰謝料請求できるの?」「過去の浮気はいつ時効になるの?」といった疑問をお持ちの方に、不倫に伴う慰謝料請求の時効について解説します。

1.時効とは

まずは、そもそも「時効」がどのようなものなのかについて解説します。
時効には「消滅時効」と「取得時効」の2つがありますが、不倫慰謝料の請求で問題になるのは「消滅時効」です。

消滅時効とは、一定期間権利を行使しないことによって権利が消滅してしまうことです(民法166条)。

不倫慰謝料の請求権も、一定期間請求しないでいると消滅してしまいます。
この期間と計算方法については次の2.で詳しく解説します。

【厳密には時効の援用がされて初めて消滅】
一定期間で権利が消滅すると解説しましたが、より正確にいえば「一定期間経過後、相手が時効を援用したら消滅」することになります。
「援用」とは、相手が「もう時効だから時効の利益を享受します」という旨の意思表示することです。援用されなければ時効期間を経過しても請求できます。

2.不倫慰謝料請求権の時効期間と起算点

(1) 時効期間

時効の期間は、請求する債権の種類によって期間が異なります。

不倫は、法律上は「不貞行為」といって離婚原因の一つにも定められているもので(民法770条1項1号)、原則として「不法行為」にもあたります(民法709条、710条)。

したがって、不貞行為をされた人は精神的苦痛を受けた被害者ですので、慰謝料を「不法行為に基づく損害賠償請求権」として請求することになります。

つまり、時効についても不法行為の時効期間が適用されるということです。

不法行為の消滅時効は次の2種類です(民法724条)。

  • 損害及び加害者を知った時から3年間
  • 不法行為の時から20年間

ポイントは、3年間や20年間という期間をいつからカウントするかです。

なお、20年の時効については、2020年4月1日の改正民法施行前は「除斥期間」というものだと考えられていました。除斥期間とは、援用しなくても消滅し、記事後半で解説する時効の完成猶予や更新もできないものです。

現在は通常の消滅時効とされているため、除斥期間はあまり問題になりません。

(2) 時効の起算点とは

時効のカウントを始める時点を「起算点」といいます。

不倫相手への慰謝料請求でいえば、「損害」と「不法行為」は不倫(不貞行為)の事実のことで、「加害者」は不倫相手のことになります。

つまり、不倫相手に対する不倫慰謝料の請求権は

  • 不倫の事実と不倫相手を知った時から3年間
  • (不倫や不倫相手を知らなくても)不倫の事実から20年間

経過すると消滅します。

注意点として、次で解説するとおり、配偶者に対する慰謝料請求では少し起算点の考え方が異なります。

配偶者に対する慰謝料請求と起算点のズレに注意

不倫をされても夫婦が離婚しない場合は、通常不倫相手にだけ請求すれば足りるので、配偶者に対して不倫慰謝料を請求するのは、基本的に不倫が原因となって離婚するときです。

つまり、不倫慰謝料というよりは離婚原因を作ったことについての「離婚慰謝料」として請求することになります。

離婚慰謝料は離婚することで発生するので、離婚した時が起算点となります。
したがって、例えば不倫されたことを知ってから3年以上経過していても、不倫が原因で離婚した場合は、離婚から3年以内であれば元配偶者に離婚慰謝料として請求できます。

また、不倫されていることは分かっていても、相手が誰か分からなければ3年間の時効は進行しません。

そのため、例えば不倫が原因で離婚してから5年経過していても、そこで初めて相手が分かった場合、不倫相手には慰謝料を請求できます。

このように、不倫相手に対する慰謝料請求と配偶者に対する慰謝料請求で時効の起算点が異なるため、両方に請求できるケースや、どちらかにしか請求できないケースがあり得るのです。

ご自分の状況で誰に請求できるのか、時効が成立しているのかを正確に把握するためには、弁護士に相談されることをおすすめします。

(3) 不倫相手に時効が完成してから請求した判例

不倫慰謝料と時効に関係する判例があります(最判平成31年2月19日)。

この判例の事案では、不倫慰謝料については既に時効が完成していたため、「不倫によって離婚させたこと」についての慰謝料を不倫相手に請求したものです。

判例は次のように述べて請求を認めませんでした。

離婚させたことの慰謝料が認められるのは、「当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られる」

このように、不倫について時効が完成してからの慰謝料請求は、非常に限定的な場合にしか認められません。

時効完成が近い場合、これから解説する時効の完成猶予や更新で、まずは時効完成を防ぐ必要があります。

3.時効を止める方法|完成猶予と更新(停止と中断)

ここまで消滅時効や不倫慰謝料の時効期間について解説してきましたが、時効の完成を先延ばしたり、時効期間をリセットできたりする場合があります(※)。
時効完成が近くて時間がないという方は、まずはこれから解説する手続きを参考にしてください。

※なお、2020年4月1日の改正民法施行で、従来「時効の停止」や「時効の中断」と呼ばれていたものは、それぞれ「時効の完成猶予」と「時効の更新」になりました。ここでは改正後の用語で解説しますが、基本的な考え方は同じです。

(1) 時効の完成猶予(停止)とは

時効の完成猶予とは、催告(請求)など一定の行為があったときに、一定期間は時効が完成しないよう猶予されることです。

完成猶予される行為としては、裁判上の請求、支払督促、強制執行など様々ありますが、不倫慰謝料の時効完成が近いときには「催告」が有用でしょう。

催告による時効の完成猶予

催告とは、相手に対して請求することです。催告を行うと、その時から6ヶ月を経過するまでは時効が完成しないこととされています(民法150条1項)。

例えば「あと2週間で3年の時効が完成してしまう」という場合でも、まずは相手に請求することで時効の完成を少し伸ばすことができます。

ただし、この催告による時効の完成猶予は、何度も適用されるものではありません。一度請求して完成猶予されている間にもう一度請求して更に伸ばすといったことはできません(民法150条2項)。

基本的に催告による時効の完成猶予は、ゆっくり裁判の準備などをしていたら時効が完成してしまう、というような場合に、まずは請求して時間を確保するといった使い方をします。

なお、催告はどのような形式で行っても構いませんが、時効完成前に催告をした証拠を残すため、配達記録付き内容証明郵便の利用をおすすめします。郵便局が日付と書面の内容を保存してくれます。

協議を行う旨の合意による完成猶予

催告以外にも、協議を行う旨を書面で合意した場合は、やはり一定期間は時効の完成が猶予されます(民法151条1項)。

これは催告とは異なり、完成猶予期間中に再度「協議を行う旨の合意」をしてさらに完成猶予することはできますが、猶予期間が通算5年を超えることはできません(民法151条2項)。

(2) 時効の更新(中断)とは

時効の更新とは、時効期間がリセットされることです。
例えば、あと半年で3年の時効が完成するという場合でも、時効が更新されれば更新された時点からまた新たに時効期間が経過しないと完成しません。

時効の更新は大きく分けると次の3パターンがあります。

①裁判上の請求等(民法147条)
②承認(民法152条1項)
③強制執行等(民法148条)

以下では、不倫慰謝料の時効で主に関係する「裁判上の請求等」と「承認」を具体的に解説します。

裁判上の請求等による時効の更新

これが最もイメージしやすいかもしれません。
裁判上の請求”等”ですので、典型的な訴訟のほか、支払督促民事・家事調停などがあります。

慰謝料について訴訟提起すると、まず時効が完成猶予されます(民法147条1項)。訴訟は時間がかかりますが、その間に時効が完成することはありません。

訴訟が終わり、判決や和解調書によって慰謝料の権利が確定すると、時効が更新され、そのときから新たに時効がスタートします。

確定判決やそれと同一の効力を持つものによって確定した権利の時効は、元々の権利の時効が短いものでも10年になるとされているため、訴訟後に新たに始まる時効期間は10年です(民法169条1項)。

なお、相手の住所が分からない、住民票の住所にいない場合でも、公示送達という方法によって訴訟提起ができます。
この場合でも時効の完成猶予、更新の効果は変わりません。

【支払督促とは】
支払督促は、金銭等を請求する場合に裁判所に申し立て、請求に理由があると認められれば裁判所から相手方に対して「支払督促」がされる制度です。
審理のために裁判所に行く必要がなく、手数料も安いですが、相手方から異議が申し立てられると訴訟に移行します。
この支払督促でも時効は完成猶予(停止)します。

承認による時効の更新

承認とは、簡単にいえば債務者(支払義務者)が「たしかに権利があって私に債務があります」と認めることです。

承認は口頭でも書面でも構いませんし、債務について一部支払うことも承認にあたるとされています(大判大8年12月26日)。

ただし、口頭での承認は後から「言った」「言ってない」の争いになりやすいため、相手から慰謝料について承認を得る場合は書面に残してもらいましょう。

書面には最低限「不倫について慰謝料を支払います」などの内容と日付を記載してもらい、署名押印もしてもらいましょう。

承認があれば、その時点で時効が更新され、不倫慰謝料であればまた新たに3年・20年の時効がスタートします。

4.時効が完成していなくても急ぐべき理由

時効をある程度理解できると、不倫の慰謝料請求でも「まだ時間があるから…」と思って請求を後回しにする方もいらっしゃいます。

しかし、不倫慰謝料を請求したいならできるだけ早めに行うべきです。
時効が完成しなくても、不倫の証拠がどんどん散逸し、請求自体が難しくなるからです。

不倫慰謝料を請求するには、証拠が必要です。証拠がなかったら、相手から「そんな事実はない」と言い返されて、それ以上追及できなくなってしまいます。これは内容証明で請求するときでも訴訟で請求するときでも同じです。

不倫の証拠を一番集めやすい時期は、不倫が行われているときです。交際中ならメールや写真なども目に付きやすいですし、探偵に浮気の現場を押さえることも可能でしょう。

しかし、別れてしまったら新しい証拠は生まれませんし、連絡の履歴等も処分されて、証拠を非常に集めにくくなります。3年を経過しなくても、証拠集めがほとんど不可能になってしまう可能性も高いです。

そのため、不倫慰謝料を請求したい場合は、時効がまだ先のことでも早めに証拠を集めて請求しましょう。

5.まとめ

解説してきたように、不倫の慰謝料の時効は「不倫の事実と相手方を知った時から3年(離婚の際に配偶者に離婚慰謝料として請求する場合は離婚から3年)」「不倫の時から20年」です。

配偶者と不倫相手とでは時効完成時期が異なることが多いため、既に時効で請求できないと思っていたら片方には請求できた、ということもあります。
また、仮に時効完成がまだ先だとしても、早い段階で証拠を集めて請求することが大切です。

泉総合法律事務所では、ご相談を頂きましたら適切な不倫の証拠の集め方をアドバイスいたしますし、相手への内容証明郵便による慰謝料請求書の送付や示談交渉、場合によっては裁判など、慰謝料を回収できるまで万全の対応をいたします。

不倫問題にお悩みであれば、お早めにご相談下さい。

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