不倫(不貞行為)

不倫相手が妊娠|離婚する?しない?とるべき対処法

不倫相手の女性から妊娠を告げられた場合、様々な考えが頭をめぐるでしょう。
本当に妊娠しているのか、出産はするのか、自分の子供なのか、今後の二人の関係はどのようにするべきかなど、多くの問題が顕在化してきます。

しかし、そのすべての問題を一度に解決することは難しいです。

そこでこのコラムでは、配偶者(妻)と「離婚するか」「離婚しないか」の2つの場面に分けて、正しい対処方法を解説していきます。

1.妻と離婚する場合

(1) 離婚した場合の妻からの請求

不貞行為に基づく慰謝料請求がされる可能性

妻が離婚を求めてきた場合、あるいは妻がこちらから請求した離婚に応じた場合、多くのケースで妻は、夫と不倫相手(仮にAとします)に対して慰謝料請求(不貞行為に基づく慰謝料請求)をするでしょう。

本件のように離婚原因をつくった夫は、「有責配偶者」と呼ばれます。

Aが有責配偶者の子を妊娠したのであれば、有責配偶者とAが性的関係をもったことは疑いようのない事実です。
そのため、妻からの不貞行為に基づく慰謝料請求は、基本的に認められるでしょう。

問題はその金額です。
不貞行為に基づく慰謝料請求の相場は、一般的に50〜300万円と言われていますが、本件において、夫婦が離婚することになったことに加え、Aが妊娠しているという事情は、慰謝料を増額させる事情となり得ます。

(不倫の慰謝料について、詳しくは「不倫の慰謝料相場」をご覧ください。)

【不倫相手が子を出産・認知請求をした際の慰謝料請求】
更に進んで、不倫相手が妊娠中の子を出産したり、その子の認知請求をしたりした場合、そのことを理由に妻は不倫相手に対し、別途、慰謝料請求をすることができるのでしょうか。
この点について裁判所は、子を懐胎する行為自体については、全体の不貞行為の一部を構成するものの、独立した不法行為とはみることはできないとし、認知請求を行うことについても、別途、慰謝料請求をすることはできないと判断しています(東京高等裁判所昭和57年9月30日判決)。
したがって、不倫相手が子を出産したり、その子の認知請求をしたりした場合であっても、そのことを理由に妻から慰謝料を請求することは認められていません

妻から自分に対する請求

離婚する場合、妻はAだけでなく、あなた(夫)に対しても慰謝料請求をすることが考えられます。

ここで注意すべきなのは、妻とAとの話し合いや法的手続が先行していて、Aから妻に対して慰謝料が支払われていた場合、夫は、妻からの慰謝料請求を拒む余地があるということです。

というのも、不貞行為は「共同不法行為」といって、複数の人間の関与により権利侵害の結果を発生させる行為で、行為者は生じた損害全額につき連帯して責任を負うとされています。

したがって、夫とAの不貞行為によって妻に支払うべき慰謝料が仮に300万円であるとされた場合、夫もAもそれぞれ妻に300万円を支払う義務を負いますが、夫かAのどちらかが300万円(全額)を支払えば、残りの一人は支払う必要がなくなります

そのため、Aがすでに妻に対して300万円を支払っていた場合、夫としては、妻に対して慰謝料は支払済みであると主張することができるのです。

他方で、妻が夫に対して請求する「離婚に伴う慰謝料」は、別途、その慰謝料を請求する余地はあります。

不倫相手から有責配偶者に対する請求もある(求償権)

先の例の場合、Aが妻に払った300万円は、本来有責配偶者である元夫も負担すべきだったものです。
妻からすればどちらかが払ってくれればよい問題ですが、Aからすれば、自分だけ払うのは不公平だという話になります。

そこで、先の例のような場合、後にAが有責配偶者に対して、負担すべきだった分を支払えと請求することが考えられます(これを「求償権」といいます)。

こうした請求が考えられるので、仮に妻が慰謝料請求している相手がAだけで、自分に請求が来ていないとしても安心はできません。

[参考記事]

不倫相手の求償権|行使されたらどうする?放棄させることは可能?

(2) 不倫した側(夫)からの離婚請求は認められるか

夫(自分)と不倫相手の女性の間の不貞行為は、民法770条1項が定める離婚することができる事由の一つですから、妻から夫に対して離婚を求めることができるのは当然です。
では、反対に、自分から妻に対して離婚を求めることはできるのでしょうか。

裁判所は、原則として有責配偶者からの離婚請求を認めていません

したがって、夫から妻に対して離婚を求めたとしても、妻が離婚に応じない限り、裁判所において離婚を認めてもらうことはできません。

もっとも裁判所は、例外的に、次の3つの要件が全て満たされる場合には有責配偶者からの離婚請求を認めるとしました。

  • 夫婦の別居が相当長期に及んでいること
  • 夫婦間に未成熟子がいないこと
  • 離婚によって相手方配偶者が精神的・経済的に苛酷な状況におかれないこと

したがって、本件で妻が離婚に応じないとしても、上記の3つの要件が全て満たされた場合であれば、有責配偶者である夫から妻に対する離婚が認められる可能性があります。
(ただ、上記の3つの要件が全て満たされるのは極めて稀でしょう。)

2.妻と離婚しない場合

では、妻と離婚しない場合はどうなるのでしょうか。

離婚しない場合であっても、妻から不倫相手Aに対しての不貞行為に基づく慰謝料請求は認められます。
(離婚しない場合、基本的にはAにのみ慰謝料を請求することになります。夫婦で家計が一緒の場合は、夫から慰謝料を受け取っても、家庭内でお金が移動するだけであまり意味がないからです。)

裁判所は、次のような判断をしています。

「第三者が配偶者の一方と不貞行為を行った場合には、その結果として婚姻関係が破綻しなかったとしても、他方配偶者の夫又は妻としての権利は侵害されたとみるべきであるから、他方配偶者は第三者に対して慰謝料を請求し得るものと解するのが相当である(婚姻関係が破綻しなかった事情は、慰謝料額の算定に当たって考慮すべき事情であるにとどまる)。」(東京地方裁判所平成22年6月10日判決)

もっとも、離婚した場合と比較して、慰謝料の金額は低くなることが一般的です。

[参考記事]

離婚しない場合、する場合の不倫慰謝料相場

【不倫相手が子を出産するのを止められるか?】
妻と離婚しない場合、妻以外の女性との間に子がいるということは、夫婦関係に大きな影響を及ぼすと言わざるを得ません。また、不倫相手が子を出産し、認知請求をしてきた場合、不貞相手である夫はこれを拒むことはできず、不倫相手との間の子に対して養育費を支払う義務が生じますので、経済的な問題も生じる可能性があります。
そこで、不倫相手が子を出産することを止められるでしょうか?
これについては、残念ながら不倫相手が承諾しない限り不可能です。出産することは不倫相手の自由だからです。
仮にですが、妻が不倫相手との間で「認知請求をしない」という内容の合意をしたとしても、先にご説明した裁判例にもあるとおり認知請求は子の権利ですので、無効な合意となります。後で認知請求をされたとしても、合意を盾にすることはできません。

3.慰謝料請求をされたら弁護士へ相談を

以上、不倫相手が妊娠した場合の対処方法について、妻と離婚する場合と離婚しない場合に分けてご説明しました。

このようなケースで適切に対処するためには、様々な準備が必要ですから、弁護士に依頼することをお勧めします。

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